霧に書いた詩/あおば
 


砂に書いたラブレター
パットブーン
1957年のヒット曲
マツダのオート三輪にも
曲面ガラスが使われだして
戦後も終わったと
みんな感じていた頃の
なんとなく未来が明るく
元気良く拡がっていた
そんな気分にぴったりで
砂というザラザラした無機質の
排他的な孤独感を知らない頃の
脂気の無い砂に書いた恋
自由恋愛が本物に見えてきた頃の

霧の中で迷った人は
五里霧中の喩えのように
息が詰まり緊張のあまり
何も覚えていないような
修羅場を体験させられる
狐に騙されたような
既視感幻聴幻覚目眩悪寒
すべてが夢なら助かると
アクセルに力を込めて
凸凹の
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