厳格な夏/あおば
だの
言いたいことを言っているように聞こえて
耐えきれなくなり
居間のガラス戸を開け放つと
外は薄日が射して蒸し暑く
夏のような陽気がどっと部屋に入り込み
身体を包み外に誘拐しようと企んでいるようだ
理不尽な、なにをする
警察を呼ぶぞと
声を荒げて
文句を言おうとしたら
アブラゼミの合唱が
遠くの霞んだ街路樹から
湯気が立つように喧しく
部屋の中にも押し寄せて
誘拐される前に殴られて
気絶させられたような
暴力的な蝉の声に
参りました
もうなにも申しませんから
お好きなように
今日一日をお過ごしになられて下さい
と
その場を納め
台所でパンを囓る
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