厳格な夏/あおば
囓る
夏だって涼しかったのに
今頃なんで蝉が鳴く
幻聴でなくて助かった
ほっとしてその原因を考える
集団で遅れてやって来た蝉たちは
カルトのように嫌われて
追い払われて
時代を写す鏡のように
てかてかと輝いて
反射して見えない
内部構造をあらわに示し
安保反対岸打倒!
懐かしいように古いスローガンを
土の中から聞かせようたって
もう遅い
若くて
元気の良かった頃に
大日本帝国の
天皇陛下様を
お護りした
凛々しい
近衛兵たちも
介護病棟の病室のベッドで
孫や曾孫に囲まれて
体育の日を昔話で
過ごすだけしか
体力が残っていないから
アブラゼミたちはイライラするように
栄えある大日本帝国万歳と
合唱して
おいおまえ
なにを考えて生きているのだ
配給の
パンを食いながら
食欲がないなんて
ろくでなしの証拠だと
言いたいように
声を上げるのだ
作2003/10/13
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