【批評ギルド】 『シャボン玉』 松本卓也/Monk
 
おくのだが、僕が物足りないの
はシャボン玉、郷愁、哀愁、苦笑いのセットが陳腐だからというこ
とではない。直接的にはそこではなく、ラストだ。

> ふと風に舞う泡沫が一つ
> 目の前をゆらりと横切った

この「ゆらり」ってわかったようでいて実はよくわからないだろう。
「ゆらり」は男の動揺でもいいんだが、動揺して終わりになって、
いやそれはそうだけど結局何の話だっけ?と感じる。情けない男の
心境をシャボン玉に見立てましたってことなら、なんて長い形容詞
だと思う。それだって詩なのだが、僕はそれを読んで「知ってる」
と思うだけだ。そういう状況なのは知ってる。僕の知ってる
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