【批評ギルド】 『シャボン玉』 松本卓也/Monk
玉に目を奪われるくらい暇だった。ただね、「奪われ
る」というが実際はそんなに受動的なものでもないんじゃないのか。
初めて見るわけでもあるまいし、意思と無関係に奪われることはな
い。つまりこの男は奪われようとしているのであって、内部ロジッ
クを説明すると「あ、シャボン玉」→「久しぶりだな」→「ちょい
と目を奪われてみよう」ということになる。こんな裏の話はミッ
キーの中の人と同様に口にすべきことではないのだが、僕もすっか
り意地悪な大人になりました、いかがお過ごしでしょうか。
ともあれ目を奪われることに決めたシャボン玉を使って、男は日常
の欠落を埋めてみる。実際には埋まらないが埋めて
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