「結婚」についての考察/服部 剛
 
 

二 

去年の春
五十三歳の詩友・Nさんと飲み屋でグラスを重ねた

テーブル越しにプレゼントしてくれたNさんの詩集を開くと
奥さんが重い病の時に書いたという

「 いつだって僕は 」

という詩を読んで頁(ページ)を閉じると
向かいの席で酔っ払うNさんは

「 結婚って素晴らしいよ・・・ふたりで日々を築いていくんだ。」

とほんのり顔を赤らめていた



年末の仕事納めの日
職場の老人ホームで行われた「 年忘れ・カラオケ大会 」で
老いた夫が五月に亡くなる数日前まで口ずさんでいたという歌を
妻のEお婆ちゃんが歌い始めると
涙があふれ歌
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