ある美しい愛の固定観念について/「智恵子抄」をとにかく読む(1)/渡邉建志
 
。その高踏主義を美しいと思える人しか読めない本だと思います。さらにここには光太郎語「裸体」もあります。

あなたは此をみて不思議がる事はない
それが世の中といふものだ
心の多くの俗念を抱いて
眼前咫尺(しせき)の間を見つめてゐる厭な冷酷な人間の集りだ
それ故、真実に生きようとする者は
―むかしから、今でも、このさきも―
却て真摯でないとせられる
あなたのうけたやうな迫害をうける

あるいはほとんど気の狭い、社会不適合者の言葉のようにすら思えます。社会とは悪い奴らばっかりなのだと言います。そして、「天然」な智恵子は「迫害」を受けるというのです。被害妄想的です。しかし、
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