ある美しい愛の固定観念について/「智恵子抄」をとにかく読む(1)/渡邉建志
郎語「天然」です、それに対置されるのが「人工」です。そして智恵子と光太郎の極上の概念こそが天然であり、かれらが忌み嫌う社会はすなわち人工である。智恵子と光太郎にとってどれだけ社会が汚いものか。そういう態度を取られると、僕はちょっと腹が立つかもしれません。しかし、ふしぎと光太郎に関してはあまり反感を覚えません。つまり光太郎には「僕らはまだ自分の心の天然を失っていない」という矜持があるのです。同時に「社会の人たちはこころを世の中のどさくさまぎれになくしてしまった」というのです。ここにある「光太郎VS社会」の構造は今後頻出します。それを、いやみったらしいと言って嫌う人は、智恵子抄は読まないほうがいい。そ
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