ある美しい愛の固定観念について/「智恵子抄」をとにかく読む(1)/渡邉建志
 
うなる女ってのは、べたぼれだええ、そうですかええ、かんべんしてください。





「或る宵」


うたから始まります。

瓦斯の暖炉に火が燃える
ウウロン茶、風、細い夕月

ここちよい響きです。7+5、8(6+2)+7のリズム。とくに「ウウロン茶、風」の風がいい。その短さがいい。

―それだ、それだ、それが世の中だ
彼等の欲する真面目とは礼服の事だ
人工を天然に加へる事だ
直立不動の姿勢の事だ
彼等は自分等のこころを世の中のどさくさまぎれになくしてしまった
曾(かつ)て裸体のままでゐた冷暖自知の心を―

でました、光太郎語
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