初夢の青年/服部 剛
年が明けてから まだ太陽を見ていない
外には只(ただ) 冷たい雨音
静かで薄暗い正月
朝
神棚に手を合わせたら
揃(そろ)えた足元の床がへこんでいた
町では偽装建築のマンションが
緩(ゆる)い地盤に立ち並び
マンションの影の通学路で誘拐され
夢のような短い生を終えた少女の霊は
うつむいたまま雨空に浮かび
雨の降る町を眺(なが)めている
凧揚(たこあ)げや羽根突きをしなくなった子供達
家の中で小さいゲーム画面を手にしてつぼめた肩の上にも
一人につき数百万円の国債がのしかかっている
夕食の味噌汁に浮く{ルビ葱=
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