初夢の青年/服部 剛
 
年が明けてから まだ太陽を見ていない
外には只(ただ) 冷たい雨音

静かで薄暗い正月


神棚に手を合わせたら
揃(そろ)えた足元の床がへこんでいた

町では偽装建築のマンションが
緩(ゆる)い地盤に立ち並び

マンションの影の通学路で誘拐され
夢のような短い生を終えた少女の霊は
うつむいたまま雨空に浮かび
雨の降る町を眺(なが)めている 

凧揚(たこあ)げや羽根突きをしなくなった子供達
家の中で小さいゲーム画面を手にしてつぼめた肩の上にも
一人につき数百万円の国債がのしかかっている

夕食の味噌汁に浮く{ルビ葱=
[次のページ]
戻る   Point(13)