初夢の青年/
服部 剛
葱=ねぎ}の輪切りさえ
遠い異国の畑に頼り
世界の中で空洞化する
この島国には
年が明けても陽(ひ)が昇らない
初老の夫婦がひとつの傘に身を寄せて
鉛(なまり)色の海の波打ち際を歩く頃
古びた一軒屋では
薄暗い部屋を照らす電球の下
結婚を考えない長男が
数杯のお屠蘇(とそ)に酔っ払い
股を広げて
幸せそうな赤い寝顔で鼾(いびき)をかいている
夢の中
ましろい空間に立つ彼は
いつまでも待っている
大切な誰かにわたす花束を抱えたまま
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