夕暮れに咲く花/服部 剛
 
いつのまに
我が胸に吹き込んできた
風の女(ひと)よ

君が踏みつけられた花を見て
傘をさしたまま立ち尽くし
ひび割れた心のすき間をほの青く光らせ
雨音に滲(にじ)む心を痛める時

遠い空の下では
僕も冷たい手をポケットにつっこんだまま立ち尽くし
街灯に映されて
アスファルトに伸びる影に
光るふたつの瞳を隠し
南の空に瞬く星の囁きに耳を澄ませている

( やがて君は夜の川辺に腰を下ろし
  已(や)むに已まれぬ心に刺さった棘のひとつひとつを抜いて
  光になった言葉達をのせた灯篭(とうろう)の小船を
  白い手からそっと離すだろう )
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