詩的インプラント 〜 馬野幹氏に捧げる鼻歌 あるいは馬野幹宇宙人説 〜/大覚アキラ
 
ぼくが小学生のときのことだ。たぶん3年生だったと思う。学校に、オペラ歌手の人が来た。児童全員が体育館に集められ、パイプ椅子に並んで座らされた。ステージの上には、タキシード姿の恰幅のいいおじさんと、派手な赤いドレスを着たおねえさんが立っていて、ニコニコと子どもたちを見下ろしていた。二人とも、小学校の体育館というシチュエーションには全然マッチしていなくって、なにやらタイムスリップしてきた異国の人のようだった。おじさんは穏やかな笑みを浮かべ、おねえさんはやさしい顔で子どもたちに微笑みかけていた。
簡単な挨拶のあと、おもむろにステージは開演した。ピアノの伴奏に合わせて、おじさんとおねえさんは歌い始めた。
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