白い花に囲まれた寝顔 〜 K 婆ちゃんに捧ぐ 〜/服部 剛
 
す。
 独身男性、残念でした〜」

ビールを飲み干したプラスチックの空(から)コップを手に
僕は自らの胸の内に生まれたばかりの淡い想いを蹴散らした

「ではではみなさまごゆっくり」
と笑顔でおじぎをした後にひとり職場の門を出ると
今日の午後火葬場で亡骸を焼いて空に上る煙となった K 婆ちゃんの
棺桶(かんおけ)の中で永遠(とわ)に瞳を閉じた寝顔を想い出した

デイサービスに部署が変わった僕が
忙(せわ)しく廊下を歩いている時も
遠くから手を振る車椅子の K ばあちゃんに近づいてしゃがんで
握手した手を離すといつも小指を立てて

「お嫁さんみつ
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