「ガラスの壁の向こう側」/服部 剛
 
北鎌倉・東慶寺の敷地内の喫茶店
外には店を囲む竹垣が見えるガラスの壁
に寄りかかりコーヒーをすすっていた
顔を上げると
店内を仕切るガラスの壁の向こうに透けて
カウンターの中に一人の妖精が佇(たたず)んでいた

僕は飲みかけのコーヒーカップをテーブルに置き
すっと立ち
ガラスの壁の真ん中ををすり抜ける

( 透明の波紋を広げ )

「向こう側」にいる妖精の素顔を・・・
互いの澄んだ瞳の黒点が合う瞬間を求めて 

コーヒーのおかわりを装い
平たい「Menu」をこちらに手渡す
あの白い手を求めて・・・

妖精の微笑みにぎこちなく会釈(えしゃく)し

[次のページ]
戻る   Point(6)