さといも家族/服部 剛
親父は定年退職し
母ちゃん専業主婦となり
息子のぼくは半人前
母ちゃん家計簿とにらめっこ
ばあちゃんが払う食費も1万ふえて
なんとかやりくりの日々であります
雨もりがあふれる床
寝つきの悪い深夜には
そそくさとねずみが走る天井裏
「介護度5」の我が家は年老いて
大工さんにあちらこちらをとんかちで叩いてもらい
首を長くして待ちに待った給料は
おかずの少ない皿を洗い終えた流しのように
穴に泡ばかりを残して消えてゆきます
今晩のおかずはひときわ素朴でありまして
白いご飯のまわりには
「お買い得!」の赤字シールがラップに貼られた
うす桃色の塩じゃけに
ねぎ
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