生前と死後のあいだで/小林レント讃3/渡邉建志
 
声しか聞くことはないのだ
あとしばらく
もうしばらくの間は

僕を包む木々の上空から
大きな鳥の
羽ばたきが聞こえた
僕は
まだ
それでいい}
なんと、今まで聞こえているかのように書かれていた「笑い」は彼には聞こえていないのだと言う。僕は/あたらしくできた/石像のように/本を読んでいる/だけ、である。なんとぴったりくるすばらしい比喩だろう。地蔵のような彼は、しかしまだあたらしい石像なのである。

 僕は
 生きている声しか聞くことはないのだ
 あとしばらく
 もうしばらくの間は

ここの哀しさはもうなんともいえない、筆舌に尽くしがたい。さいごのくりかえしの声を聞け
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