生前と死後のあいだで/小林レント讃3/渡邉建志
 
の視線である。昔、天へと登っていった自殺者の笑いが、今、木々から降ってくるかも知れない、というのはすごいはなしで、その時間的射程の広さに思わず打たれてしまう。

 崖をのぼっていく水に
 じっと
 焦点を合わせた後
 僕は本に眼を落とす

この映像効果も大好きだ。僕らは思わず水に焦点を合わそうとするだろう。そして、また膝の上の本に眼を落とすだろう。
{引用=
4.
鯉の墓は
僕の隣に
しらじらと
灰色
まっすぐ
立っている
カップ酒が
供えてあるが
中身は雨水で
地蔵は
いつまでも
そっちをみて
笑っている
髪の毛のように
苔が生えている
涙のよう
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