生前と死後のあいだで/小林レント讃3/渡邉建志
 

冒頭を見ると、

 その崖は
 かつて
 滝
 と呼ばれていた
 滝
 の下にできる
 水の窪みは
 それは
 滝壷
 と呼ばれていて

ここで初めて「滝」という言葉が出る。「呼ばれていた」といい、もういちど「呼ばれていて」と言う。われわれの視線はまず滝を見、次に下がって滝壺を見るだろう。改行のなせる魔術だ。これをもし淡々と書いてしまうと
 
「その崖は、かつて滝と呼ばれていた。滝の下にできる水の窪みは、それは滝壷と呼ばれていて」

これではただ定義を読まされているだけであり、「滝の下にできる水の窪みはそれは滝壷と呼ばれていて」に至っては馬鹿にするなそんなこと
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