醤油/たもつ
名前をつけるのに精一杯で、気がつけば
皿には醤油の海があった
黄身が月!
+
ある日、この世から醤油がなくなってしまった
でも、誰もそれに気がつかない
「醤油」という概念そのものがなくなってしまったからだ
回転寿司屋では客が寿司にソースをつけて食べている
「俺たちは何か間違っているんじゃないか!」
一人の若者が立ち上がって叫んだ
その場にいた人たちは、はっとして若者を見たが
また、何事もなかったかのように寿司にソースをつけて食べ続けた
そして若者も再びその中に紛れ込んだ
若さ故の衝動
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この世から醤油がなくなって困る者はいなかった
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