改札で詩友達と別れた後に/服部 剛
 
ゆっくりと小さい駅のホー
ムに入って来た江ノ電に乗り、僕は曇り空の下に広がる灰色の海を
見つめながら、自分の詩を静かな想いで噛み締めていた。

  あの日僕は
  「わかっておくれよ」と友情を乞うては
  君のかけたサングラスの奥に
  ぼやけた本音を掴めぬまま
  いくつものボタンを掛け違えた
  自分の姿も見えぬまま
  ロダンのうつむきで
  夜の浜辺に一人腰を下ろしていた
  波音は沁み入るように傷口を洗った

 そして、別れへと向かって走る江ノ電に乗る僕の傍らに置いた鞄
の中には、難波氏の詩集がいつも傍らにいる友のように入っていた。
その詩集の表紙を開くと
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