改札で詩友達と別れた後に/服部 剛
 
 思い返せば僕にも「青春」と呼べる時期はあった。新宿・歌舞伎
町で地面にダンボールを敷き、夜明けの始発の時刻に僕等は立ち上
がり、それぞれの現実に向かって歩き出し、駅の改札で互いの手を
打ち鳴らしてはそれぞれに乗る列車の方角に別れ、僕は独り放早朝
の新宿をふらついた、そんな頃があった。独りになると寂しくなり、
仲間達の顔を思い浮かべていた。

あれから月日は流れ、大人なった僕の胸に、仲間達の色褪せた顔を
思い出すと、今でも少し、苦い想いが渦巻くのを感じる。あの朝、
改札でそれぞれの方角に別れたのは、あの日のことだけを物語って
いたのではなく、「いずれ人は皆、独りでそれぞれの道
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