背中のぬくもり/服部 剛
もう一度
その無数の紅く小さい花々を闇に咲かせたシャツの下に
酔って赤らんだ白い背中で
僕に凭(もた)れてくれないか
なぜ
君の背中のぬくもりを
もっと素直に感じなかったのだろう
仲間等と徹夜で飲んで語らったあの朝には
ビル群の谷間から陽は昇れど
僕の酔った脳はぼやけて
君の美しさをみつめるはずの瞳はどこか曇っていた
もう一度
その強がりに見えるようで
触れてみれば柔らかい
君の白い背中で
僕の腕に寄りかかってくれないか
飲み屋を出て
仲間等の群れをはぐれ
地下道を独りふらつく寒がりの背中はいつだって
傍(かたわ)ら
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