野人の荒野/黒田康之
 
徊してゆく
ああもうすぐ夕焼けが来て
そうして夜が来る頃には
ここはそう野人の荒野
すべての言葉を
この岩々に
松の葉の一つ一つに
岩盤を伝い登る波頭の響きに投げ捨てて
置き換えて
ああ私は野人の荒野
助手席には向日葵の花を置いて
明日の夜明けのために
爛れた爛熟の肉欲のすべてを
その夜明けのためにささげて
向日葵よ
おまえを見つめ
おまえを撫で
おまえを食らおう
そのとき
私の投げ捨てた言葉は
高くこの土から
あの松から
岩から飛び立って
ああ焼かれてしまうのだろう
そうして
この深い酔いと闇が打ち果てるとき
私は野人としてふさわしい
野人の
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