野人の荒野/黒田康之
 
人の野に立つ
この願いをこめて火祭りとしてのタバコを点す
街はいつも整然として
私はその中に秘めたる野人として生きるために
こうして今ここに来ている
この波の砕ける音に
砕け散れ言葉よ
この風の押す力に
四散せよ言葉よ
ああ私は野人の荒野
怒りと歓喜と愛欲と恐れがいっぺんに
瞬時に私の中で勃興する
ああ私は野人の荒野
海にも松の林にも
岩にも夜明けにも対峙した
野人の荒野
私の体には
この緑の草の露と
明日の赤い陽の色が流れ
どんどんとむき出しになる無用の牙で
過去という過去を噛み砕き
霧散させる
ジンよ ジンよ
私はそう野人の荒野
果てのない血の色をした野人の荒野

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