昼休みのラーメン屋にて 〜ありんこ営業マンの夏〜/服部 剛
 
今日も額に汗を滲ませて
門前払いは覚悟の上
蝉の鳴き声しか聞こえない
住宅地のあちらこちらを歩く私は一匹のありんこ

無数のピンポンを押して
ようやく玄関のドアは開いて
満面の笑みと話術とサービスを繰り出し
オフィスの営業グラフが落ち込まぬよう
くどいたお客さんの喜ぶ顔を見れるよう
額の汗をハンカチで拭いつつ
一匹のありんこは今日もゆく

昼休みのラーメン屋でひと息ついて
しょうゆラーメンを待つ間
財布から給料明細取り出して

(日々ノ地道ナ仕事ハ果タシテ評価サレテイルノダロウカ・・・)

と声も無くひとりごちては
こんでいてなかなか来ないラーメンを待ちわび
[次のページ]
戻る   Point(8)