プー子さんの退職/服部 剛
んだ皆の間に
一瞬、沈黙が流れた
思えば自分の姿を見失い
この部署に移動してきた頃
土の中にもぐっていた僕が
豊かな土からのびやかに緑の芽を出したのは
たくさんの欠点に覆われてちぢこまっていた僕の
抱えたひざの奥に植えられた
たったひとつの光の種に
時にぽかぽかとお日様のような
時に慈しみの雨のような まなざしを
主任のプー子さんがそそいでくれていたから
数ヶ月前
移動中の車の中で
ハンドルを握りながらプー子さんは
助手席の僕に
プーさんの話をしてくれた
「プーさんはね、周りの皆に
お前はのん気に何やってんだ。
とか言われながらも、
最後に
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