プー子さんの退職/服部 剛
 
んだ皆の間に
一瞬、沈黙が流れた

思えば自分の姿を見失い
この部署に移動してきた頃
土の中にもぐっていた僕が
豊かな土からのびやかに緑の芽を出したのは
たくさんの欠点に覆われてちぢこまっていた僕の
抱えたひざの奥に植えられた
たったひとつの光の種に
時にぽかぽかとお日様のような
時に慈しみの雨のような まなざしを
主任のプー子さんがそそいでくれていたから

数ヶ月前
移動中の車の中で
ハンドルを握りながらプー子さんは
助手席の僕に
プーさんの話をしてくれた

「プーさんはね、周りの皆に
 お前はのん気に何やってんだ。
 とか言われながらも、
 最後に
[次のページ]
戻る   Point(17)