プー子さんの退職/服部 剛
ある日、仕事を終えて
更衣室のロッカーを開くと
取り付けの小さい鏡の下に
お守りのようにぶらさげていた
5センチのくまのプーさんが姿を消していた
プーさんは
うまくいった日も
へまをした日も
ロッカーの扉を開くと
少しくたびれた僕に
「いつもがんばっているね」と
黙ってほほえんでくれた
数日後の会議で
プーさんをこよなく愛し、
プーさんのようにふっくらした
主任のプー子さんが
「えーっと、わたくしごとなんですが・・・
このたび、結婚することになりまして、
10月いっぱいで退職いたします。」
突然のめでたい話に
主任のプー子さんを囲んだ
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