おはじき/あおば
 
みぞれの降る中 
父のコウモリをさして
図書館に行く
(春とは名ばかり)
早咲きの水仙は凍え
風雨は破れた生け垣を震わせ
裸の額に夕暮れの灯火がにじむ
本当に寒くて泣きたくなった

(花が好きだった娘時代のこと)
美術学校推薦入学のことを口にした途端
母はワッと声をあげて泣き伏した
お父さんがカサッ原の所有権だけでも明確にしておけば
私を好きな道へ歩ませることくらい
なんでもないことだったのに
そう言って泣き伏した母の姿態に
ならぬことを口にした愚かさを後悔した
初めから諦めていたつもりなのに
幼い未練が声をあげたのだ

日々を楽しく忘れるために
レッテル
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