ありえざるもの/大覚アキラ
 
いた。

 どのぐらいの時間そうしていたのかわからないが、何の前触れもなく突然テレビが消えた。部屋の中は再び真っ暗闇になった。同時に、金縛りも解けた。

 途端にぼくは、それこそ腹の底から湧きあがってくるような物凄い恐ろしさを覚えた。ベッドから飛び起きて、スリッパも履かずに部屋を飛び出すと、隣の部屋で眠っていた同行のカメラマンを叩き起こしたのだった。

 ……翌日。
 恐る恐る部屋に戻ったが、部屋の中には、別段おかしなところは見当たらなかった。カメラマンは、ぼくが寝惚けてたんじゃないかと笑いながら言う。そう言われてみると、そんな気になってしまうぐらい、部屋の中には何の気配もなく、あま
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