天の川に架かる橋の上で/服部 剛
 
冊や飾りはクーラーの風に少し揺れて
目の前の薄桃色の短冊を読むと
いつも夫の文句ばかり言っているRおばあちゃんが
リュウマチの曲がった指で握ったペンで
一行、崩れそうな文字を綴(つづ)っていた

「入院している夫の病がよくなりますように」

笹の葉の下に
7月のお誕生者を載せる大きい紙をひろげた僕は絵筆を握り
川に架かる橋の上の夜空に打ち上げられて光って開く花火を
橋の真ん中で肩を並べて仰いでいる織姫と彦星を描いている

「 今日も地上のどこかで争いに血を流す悲劇よりも
  世の全ての織姫と彦星が
  きらめき流れる天の川をわたる橋の上で
 
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