春一番になった鬼/板谷みきょう
。
第四章 すったら事、気にしてねぇど
その時、村を激しい突風が襲った。
だが、その風は、
澄乃の家の障子をふわりと膨らませ、
軒の風鈴を一回だけ鳴らした。
「……ばっちゃはな、それからずっと、
一人でこの風を待ってきたんだ。
吉はな、自分を追い出したわしたちに、
『よく頑張ったなぁ』
『春だど』って、温かい風を運んでくる。
吉の声が、風の中で聞こえるのさ。
『澄乃、気にしてねぇど。
すったら事、気にしてねぇど』って」
ばっちゃは、囲炉裏の灰をゆっくりとかき回した。
火の粉がひとつ、ぽうと上がって、消えた。
「……わしらは、吉を鬼にした。
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