咲子?/たま
 
 時刻は午前四時四二分。客船「かめりあ丸」が三宅島に着くのは午前五時ちょうどだったから、たぶん、船は三宅島の桟橋に接岸するために、海上を旋回しているのかもしれない。そうおもったとき、船室の灯りが一斉に点いた。

 東京〜三宅〜八丈島航路に就航する「かめりあ丸」が、竹芝桟橋を離れて八丈島に向かうのは、午後一〇時二〇分だった。三宅島に渡航するわたしは昨夜の午後九時すぎに、山手線浜松町の北口を出て東に向かった。東京の海の玄関口へとつづく、控えめな意匠に飾られた歩道を行くと、桟橋はもう目と鼻の先にあって、車道と分離帯がややこしく入り組んだT差路に突き当たると、竹芝客船ターミナルの灯りが正面に見えた。
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