咲子?/たま
かった。会社のひとたちはそんなふたりを、見て見ぬ振りしていたのだとおもう。
二月は年度末のしごとがあって残業日がつづいたが、おそい夕食を済ましてからも、ふたりはこたつに入って向かい合った。
「ね、リクオさん……」
漢和辞典を手にしていつもの問いがはじまった。
「はい、はい。きょうはなんですか?」
「あのね。愛してるのアイは、音読みですか? それとも、訓読みですか?」
「愛?……」
「そうよ、アイ……」
「あれ?……意外とむずかしいなあ……」
「でしょ? うふっ」
「訓読み!」
「ぶー。音読みでした」
「えっ、ほんとに? じゃあ、訓読みは?」
咲子のこの手の問いはたい
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