咲子?/たま
校生のころに、新宿で映画を観た帰りは「つるや」のきつねうどんを食べるのが、わたしのたのしみだった。昭和のころの百円札みたいなかたちした油揚げは、出汁がよく染みていていちど食べたらクセになってしまった。
咲子は天ぷらそばを食べていた。
「どんなとこ?」
「うーん、なにもないとこ。山も、海も、川はあるけど見えないしさ……つまり、平らな町ってこと。関東平野のどまんなかの……」
といっても、そんな風景を咲子はおもい描くことはできなかったはずだ。わたしが咲子のふるさとを、おもい描けないのとおなじように。
「こんどさ、ショウコが家に帰るときはぼくもついて行くよ」
「ん、でも、あたしが先よ。ね、
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