谷間にとじる鼓動の傘をおいかけて ―なくしたものと出会える町で―/菊西 夕座
読んでほしいと渡されたのは『霧のむこうのふしぎな町』で、
なくしたものと出会える日々が少女をとおして綴られている。
小径をはずれて森の奥へと風にとばされきえいる雨傘、
少女がおいかけ迷いこんだら霧のむこうにふしぎな町が。
本屋と船具店とおもちゃ屋と、菓子屋のとなりに瀬戸物屋、
通りひとつをかこんだ5軒の店が晴れた霧のかわりにあらわれて
つきあたりの正面に少女の傘が矢印みたいにさしてる屋敷。
その薔薇がつたわる柵ごしに少女をまねいた老婆がみえる。
「まっていましたよミス・ロンリー」と、老婆が私によびかける。
私はミスでなくミスターですし、待っていたのは少女でしょうと答える。
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