咲子?/たま
 
対岸を見ると、芝生を敷きつめたような緑地があって、目の覚めるようなあおいガラスで化粧した、高層ビルが立ちならんでいる。遊歩道のフェンスに手をかけて、咲子は対岸の風景から目を離さなかった。
「あ、カモメ……」
「カモメ?」
「ほら、あそこ……」
 咲子は高層ビルの上を飛ぶ数羽の白い鳥を指さした。
「ほんとだ。しろいね」
「くちばしが黄色いでしょ、あれ、ウミネコよ」
「クチバシ?……」
 まさかとおもった。この距離で、くちばしの色なんてわたしには識別できない。ましてや真夏のこの眩しい空の下だというのに。
 ウミネコは海のある方向に飛んで行くのだろうか。咲子はその白いつばさをいつまでも
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