咲子?/たま
を超えているだろう。咲子もわたしもゆるいTシャツいちまいだったのに、雲ひとつない炎天下に立つとすぐに汗がにじんだ。咲子は手提げカバンから、飾り気のない白い帽子を取り出して目深にかぶった。それでわたしは気づいたのだ。きょうのデートコースはすでに、咲子の手提げカバンのなかにあったのだと……。
バス停に立つと道路を隔てた沿道に、まだ若い桜の木がまばらにならぶひろい歩道があった。その歩道に渉ると、隅田川の川べりに沿ってつづく遊歩道に降りることができた。
コンクリートのざらざらと風化した階段を降りて遊歩道に出た。
「あ、すごくいい……」
つぶやくような咲子の声だった。
永代橋を背にし
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