咲子?/たま
 
効いた映画館にいて、スクリーンに映る東京の街角の風景を観ているようだった。
 七月の午後の日差しに溶けはじめたコンクリートと、鉄と、アスファルトの野暮な風景を、咲子は見たかったのだろうか。目の前を流れ去る風景はたしかにバスでなければ、見ることのできない風景だったかもしれない。でも、咲子の視線は、その風景のなかにどうしても見つけなければいけないものがあって、瞬きもせずに見つめているという感じだった。
 いったいなにをさがしているのだろうか。
 そんな咲子のさがしものは隅田川のほとりで見つかるのだった。


 バスは永代橋を渉りきってすぐのバス停に止まった。
 午後の気温は軽く三〇度を超
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