ショウヘイ/後期
「だからな……」
今村は顔を上げる。
「美しいんだよ。確かに。人間の、どうしようもなさまで、ちゃんと“映画”にしてしまう」
場に、妙な静けさが落ちる。否定も肯定も、もはや不要だった。清められた泥と、腐り続ける泥。どちらも人間で、どちらも、この場から逃げられない。今村は最後に、ぽつりと付け足す。
「だから困るんだ。
ああいう人が、同じ時代にいるとさ」
それは悪口でも、賛辞でもない。
同業者としての、どうしようもない実感だった。
黒澤は、ここにはいない。
だが、その不在が、かえって場を引き締める。
清流と汚泥が、同じ川の中で分かれたまま流れているようだ。
「どっちが正しいかじ
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