ショウヘイ/後期
 
ただ、踏み固められた生活の跡がある。沈黙は、もはや純粋な形を保てない。
表面に付着した「業」は、洗い落とすことができず、黒光りしている。場はさらに濁る。誰も全体を見渡せない。しかし今村だけが確信している――この濁りこそが、人間が立っている唯一の地面だということを。
今村昌平は、少し鼻で笑ってから、黒澤の名を出した。敬称の「さん」を付けるところに、距離と癖がにじんでいる。「黒澤さんはね……きれいなんだよ。きれいに撮る。人間を」そう言って、今村は指先を拭うような仕草をする。まるで、土を払ってしまうのが惜しい、と言いたげに。「英雄がいて、覚悟があって、筋が通ってる。ああいうのは、立派だよ。立派すぎる
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