【批評ギルド】『四月の遊び』 かるや/Monk
。ゴゴゴォ、と音をはなって迫る緊迫感ではなく、静かに各自の襟元あたり
からすっと忍び込むような緊迫感だ。
冒頭の墓の登場で、ほんとに葬列のようになっている。墓に向かっているわけ
ではないので葬列の帰り道なのだが、墓を背後に帰路につく学生たちには前が
見えない。不安や風に舞う桜の花びらが彼らの眼前を遮っている。
このような帰路を辿るのは、あとどれほどの間だろうか。次第に桜も散り、不
安もなくなり、目の前には青空や山田商店のノボリや新しい制服のスカートが
映ることだろう。この葬列の寿命はほんのわずかなのだった。そしてたくさん
あった墓の存在も彼らの記憶から徐々に薄れてゆくだろう。
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