すすき野原の物語(はかりしれない郷愁)/板谷みきょう
 
ちが恐れた影を、
解剖した死体のように冷たく切り分けていきました。

彼は、子供たちが境界を越えたという証言さえも
「未発達な認知による誤認」と断じました。

彼の目には、すすき野原はただの「地形」であり、
風はただの「気象現象」にすぎませんでしたから。

しかし、調査の最終日。

学者は、かつて祠が建てられたその場所、
いまや朽ち果てて倒壊しそうな木箱の前に立ちました。

風はありませんでした。

空は抜けるように青く、計器は「異常なし」を示し続けていました。

にもかかわらず、彼の指先が、突如として激しく震え始めました。

「……書けない。」

学者
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