河童伝・第三話「名を呼ばれぬ河童」/板谷みきょう
三郎の名が、村の口から消えはじめたのは、そう年月の経たぬ頃でございました。
神として呼べば重すぎる。妖怪として呼べば怖すぎる。
結局、人々は名を避けました。
「……あの水のこと。」
「……あれのおかげで。」
名を呼ばれぬものは、次第に“居ないこと”にされていく。村はそれで、うまく回っているように見えたのでございます。
ところが、秋の終わり。最初の異変は、“音”でした。
夜更け、誰もいないはずの川辺から、ぴちゃり、ぴちゃり、と水を踏む音が聞こえる。見に行っても、波紋だけが残り、姿はない。
翌朝、川沿いの畑に、奇妙な足跡が並びました。
人の足より小
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