ておてお/歌留多カタリ
 
デオニシスの山脈はとても越えられぬ
ひとつになってひとりになって
ておておの春に出逢う
はらりと落ちる涙の中を
通い合う過ぎし日を想うたびに

空秋が雄叫びをあげる
ライラックの落葉
掌に満たされ柔らかくなっていく
包まれていく
つま先立ちの稲妻

野に放たれた犬どもを走らせる
いくつもの時代を手折り
ぬくもりのなかを濡れ渇き墜ちていく
わだちの煙と干し草の匂い

深く吸い込むほど拡がっていく血の匂い
拡げようとするものは誰一人応えぬ
逃げようとするものは誰一人呼び止められぬ
誰一人疑わぬ世を生きて
うたかたに揺れ動く影に怯え
語り合う者
そねみ合う者
[次のページ]
戻る   Point(4)