mimicry/ホロウ・シカエルボク
 

暗闇が揺蕩うその瞬間世界に生まれる穏やかな亀裂、その断面にこっそりと刻まれた小さな文字を口にしてはならないと言ったのは決して姿を見せぬ者だった、その声は風に揺らぐ枝葉のように静かだったが、でも確かに聞き取ることは出来た、いや、そもそも姿など持たない者なのかもしれない、今となっては確かめようもない、その時目にすることが出来なかったものは他のどんな時にも目にすることはないだろう、通り過ぎたものにこだわるのは愚かだ、すぐに引き返すことが出来るならそうすればいいがそんな余裕のある時間など誰にもそうそうあるわけではない、それを手にしたみたいな顔をするのは途中で諦めたやつくらいさ、記憶は歪むだろう、そして
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