冬が忍び寄ってくる/岡部淳太郎
あの夏に 女の長い
栗色の髪は確かに輝いていた
だが いまは秋
日が短くなり
闇が長くなってきている
その短くなりつつある栄華の時を汚し
女の長い 栗色の髪を梳く
風のようでありたいと
身の程も知らぬ思いに駆られたこともあったが
やはりいまは秋
傾いた輝きはじきに横たわり
その遺体のうえに
次第に冬が忍び寄ってくる
言ってみればあれは若さというものの
輝きの徴であった
その時既に傾き始めていたこの心が
最後に求めた他者の輝きであった
それを手に入れようと
思ったわけではなかったが
それを愛でて
見守っていたいと
思っていたのかもしれぬ
だ
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