冬が忍び寄ってくる/岡部淳太郎
だが そんな下劣な欲求も
やがてしぼむ
冬が忍び寄ってくるのと合わせて
否応なしに終わらされる
この秋の日に
冬が忍び寄ってくる天候に
あの女の長い 栗色の髪も
輝きを失っただろうか
それは短く切られ
もしかしたら老いとともに
白髪ですら混じっているかもしれぬ
女はそれに出来る限り抗おうとするだろうが
もうあの夏の
憧れられた輝きは戻ってこないのだ
それに代わって冬が
冬の暗さと闇が
女を取り巻くいのちの領域そのものに
しずかに 確実に
忍び寄ってくる
(2025年11月)
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