冬の磁場/岡部淳太郎
だ。そんな中では冬の凍える
寒さにこそ、幽かなものがすべりこんでくる磁場が生
まれるというものだ。その磁場を人も感じるから、人
もまた幽かになり、その中で凍えてゆく。寒さは人の
心を凍えさせ、人を幽かな存在にさせるから、すべて
が集まる暑さの夏よりも、実は幽霊に相応しい季節で
あると言えるのだ。いまこそ幽かなものはこの寒さに
凍えて、ふるえながら透明なものへと変わってゆく。
それからこの磁場に
幽かなものたちがせめてもの思いとともに
頼りなく集まってくるのだが
そこには かつての夏の栄華
その思い出もあり
吐く息が白く汚れて
栗色の髪も白くなって
その白さに磁場の
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