冬の磁場/岡部淳太郎
 
場の圏域すべてが
しずかに染められてゆく

この冬の磁場に集まって
捉えられて
幽かなものはますます幽かに
この季節とともに幽かになって
それから 夢は霧のように消えて
そのたびに 次第に狂ってゆく心があって

女は何かを思い だしながら
この冬に恨みがましい思いを
白い息とともに
吐き出してゆく

そうして 心が風邪をひいて
幽かにふるえて
この寒さの磁場のなかで
ただ 迷うしかなくなるのだ

冬の存在を呼び寄せて、そのなかに捉えて、冬の磁場
は佇み、いまや地球そのものが冬なのが感じられる。



(2025年11月)

戻る   Point(4)